歴史的名作『ゴールデンアイ007』がXbox 360向けにリメイクされていた。グラフィックの切り替え機能や完成間近でのキャンセルなど、元レア社員が開発当時の思い出を語る

 NINTENDO64を代表する歴史的名作『ゴールデンアイ007』。2011年に別会社により内容を大きく変えてWiiでリメイクされたが、じつは2006年ごろにオリジナル版を開発したレアの手でXbox 360向けにリメイクされようとしていた。

 海外メディアArs Technicaは現地時間の2月8日、当時その開発に参加したアーティストのロス・ベリー氏とプログラマーのマーク・エドモンズ氏にインタビューした記事を掲載。ほぼ完全にプレイ可能な状態でファンの手に渡ったXbox 360版『ゴールデンアイ007』について、当時の制作背景を明らかにしている。

(画像はArsTechnicaより)

 『ゴールデンアイ 007』は同名の映画を元にしたゲーム作品で、日本で最初に流行したFPSといっても過言ではないだろう。ある世代のゲームファンにとって、NINTENDO64と本作の存在は切っても切れない関係だった。
 ちょうど今の子供たちが『フォートナイト』を遊ぶように、当時の子供たちは『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』『マリオパーティ』とともに、銃で撃ち合う『ゴールデンアイ 007』を遊んでいた。本作がFPSのマルチプレイ初体験だったという方も少なくないはずだ。

 FPSの歴史として見ても、敵や味方、一般市民が混在する高度なAI、当時まだめずらしかった全編の完全3D表現、映画原作ならではのカットシーン搭載、画面分割によるマルチプレイ、楽しいチートコードなど、のちのFPSの手本となる要素が数多く搭載されていた。
 これらすべての要素が『ゴールデンアイ 007』で初めて実現したわけではないが、時代を切り拓いた作品だったことは間違いない。

 そんな同作の幻のXbox 360版に関しては、2016年にリークされた複数の映像からその存在が確実視されていた。2019年にはさらに膨大な映像リークが発生し、存在はほぼ事実であることが認められた。そして2021年、初めてプレイ可能な状態のファイルが発見され話題となった。

 リーク元は不明だが、ほぼ完成品のゲームを受け取ったのはGraslu00と名乗るストリーマーだ。Graslu00氏はゲームを遊ぶ様子を自身のYouTubeチャンネルにアップロードしている。

 Ars Technicaのインタビューに登場したマーク・エドモンズ氏は、オリジナル版の開発にも参加したプログラマー。ベリー氏はオリジナルの『ゴールデンアイ 007』には関わっていないが、レアの『パーフェクトダーク』の製作などに参加した。なお、ロス・ベリー氏ともに現在はレアを離れている。

 彼らが『ゴールデンアイ 007』のリメイクに取りかかったのは、2006年後半から2007年初頭だったという。権利元に確認を取る前にゲームを作り始めたそうで、任天堂や『007』のゲームを開発する権利を持っていたアクティビジョン、映画『007』自体の権利を持つMGMなど、公に作るには許可を取る権利者リストは長大だったという。

 はじめは小さなチームだったが、次第に社員8人が製作に参加するプロジェクトへと成長。リメイク版のモットーは「オリジナルに忠実であること」。大規模な追加要素は避け、大きな変更点はネットワーク対戦とXbox 360向けにアップグレードされたグラフィック、マルチプレイモードへのマップ追加に絞った。

 また、開発中にチームは面白い仕掛けを思いついた。ゲーム中にいつでもワンボタンでNINTENDO64とXbox 360のグラフィックに変更できるというシステムだ。この思いつきは、Xbox 360のリメイク版『ゴールデンアイ 007』がキャンセルされたことで日の目を見ることはなかった。
 同様のシステムがゲームファンの前に現れたのはそれから4年後、2011年に発売された『Halo: Combat Evolved Anniversary』だった。ワンボタンでオリジナルのXbox版とXbox 360版のグラフィックを切り替えられる機能は話題となった。

 ゲームの開発は順調に進み、出荷まで残りのバグリストは90個ほどとほぼ完成に近づいたころ、突如としてプロジェクトはキャンセルされた。キャンセルは任天堂からの通達だったというが、その通達に誰が関わっていたのかは不明だという。
 エドモンズ氏は、時期は不明ながら上司から開発のゴーサインが出ていたと振り返っている。すべての権利関係はクリアになり、任天堂のコンソール向けに移植するなどといった条件は一切ないはずだった。チームにとっては、まさに青天の霹靂だっただろう。

(画像はロス・ベリー氏のArtStationより)

 2019年にリークされたXbox 360版の動画には、『ゴールデンアイ007』スタッフがインタビューを受ける動画が収録されていた。開発者の「発売から17年後」という言葉や動画の形式などから、Xbox One向けソフト『Rare Replay』に収録される予定だったものではと推測されている。

 『Rare Replay』は2015年に発売されたレアのさまざまな作品を収録したオムニバスゲーム。2008年までのレア製ゲームを収録したが、『ゴールデンアイ007』は未収録だった。リークされた動画から、『ゴールデンアイ007』も『Rare Replay』に収録する予定だったが、直前になってキャンセルとなった可能性が示唆されている。

 一方、プレイ可能なファイルには2007年の日付がつけられていたことが確認されている。2015年にXboxのフィル・スペンサー氏が「『ゴールデンアイ』の権利は非常に挑戦的です。我々はいつも諦めてきました。」と、リメイクに幾度となく挑戦しては権利関係で諦めてきたことを自身のTwitterアカウントで仄めかしていた。レアは2002年にマイクロソフトに買収されている。

 少なくとも2007年にはリメイクプロジェクトが動いており、マイクロソフトもXbox 360で発売する権利を得るために動いており、Xbox One世代に入ったときにも、リメイク版『ゴールデンアイ 007』を『Rare Replay』に収録するために動いていたのかもしれない。

 リークについてどう思うかとArsTechnicaに聞かれた両氏は、どちらも笑顔だったという。リークの是非はさておき、情熱を注いだプロジェクトが日の目を見ることはやはりうれしく、良い思い出が蘇ってくると答えている。キャンセルされたほとんどのプロジェクトは、どんなに情熱を注いでいたとしても日の目を見ることはほとんどない。ちなみに、リークされたゲームはキャンセルされた当時のものではなく、少し前のものだったという。

 最後に、エドモンド氏はNINTENDO64の『ゴールデンアイ 007』が発売されてから24年でFPSのコントロールが大きく変わったことを振り返っている。NINTENDO64はスティックが1本だが、現在コンソールFPSの主流はスティック2本で視点と移動の両方を動かす操作法だ。
 ただ、ここでも『ゴールデンアイ 007』の先進性が再確認されることとなった。ゲームにはコントローラーをふたつ使い、2本のスティックでゲームを操作する“プロ向け”の操作方法が、すでに実装されていたのだ(参考記事)。

 一方のベリー氏は、『パーフェクトダーク』のように何年経っても作品を愛し続けるファンへの感謝の気持ちを語っている。ゲームを愛した氏にも思い出の中で輝くゲームがあるように、自分の関わったゲームが愛され続けることには格別の思いがあるのだろう。

(画像はロス・ベリー氏のArtStationより)

 発売から四半世紀が経とうとしているが、今なお新しい情報がニュースを賑わす『ゴールデンアイ007』。その存在感とカリスマには驚かされるばかりだ。

ライター/古嶋誉幸

ライター
一日を変え、一生を変える一本を!学生時代Half-Lifeに人生の屋台骨を折られてから幾星霜、一本のゲームにその後の人生を変えられました。FPSを中心にゲーム三昧の人生を送っています。
Twitter: @pornski_eros
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